# Section4 形容詞 ### 1. 形容詞の種類 ロシア語の形容詞は、**辞書形がどのような語尾で終わっているかによって、3種類に分類されます。** ※辞書形というのは、辞書に載っている形、つまり形容詞なら主格の男性形です。
種類辞書形の語尾
**硬変化(語尾非アクセント型)** ※「硬変化Ⅰ」や「硬変化A」と言う人もいます。**-ый** 例:но́вый(new)
**硬変化(語尾アクセント型)** ※「硬変化Ⅱ」や「硬変化B」と言う人もいます。 **-о́й** 例:большо́й(big)
**軟変化** **-ий** 例:си́ний (blue)
・辞書形において、形容詞の最後の文字はすべて「й」で同じですね。 ・「硬変化」タイプは、「**ы**й」「**о**й」といった硬母音が語尾に来ているからそういう名前です。軟変化タイプは逆に「и」という軟母音が語尾に来ています。
硬母音の字**а(ア)****ы(ウィ)****у(ウ)**э(エ) **о(オ)**
軟母音の字**я(ヤ)****и(イ)****ю(ユ)****е(イェ)** / ё(ヨ)
・「語尾非アクセント型」「語尾アクセント型」というのはその名の通りです。辞書形が「-ый」で終わっているものは絶対に「-ый」にアクセントが来ることはなく、辞書形が「-ой」で終わっているものは絶対に「-ой」にアクセントが来ます。 ### 2. 形容詞の形の変化 ロシア語の形容詞も基本的には英語と同じなのですが、**被修飾語(形容詞が修飾する名詞)の性別によって語形が変わります**。
**男性名詞を修飾する形** **(=辞書形)** **中性名詞を修飾する形****女性名詞を修飾する形**
硬変化(非アク)**-ый **例:но́в**ый** стол (new desk)** ** **-ое** 例: но́в**ое** окно (new window) 例:больш**о́е** окно (big window) **-ая **例: но́в**ая** книга (new book)** **例:больш**а́я** книга (big book)
硬変化(アク)**-о́й **例:больш**о́й** стол (big desk) ** **
軟変化**-ий **例: си́н**ий** стол (blue desk) **-ее **例: си́н**ее** окно (blue window)**-яя **例: си́н**яя** книга (blue book)** **
…というのが教科書的な表記です。 ただうれしいことに、硬変化の語尾非アクセント型と語尾アクセント型は、主格の男性名詞形(つまり辞書形)以外、**まったく同じ活用をします**(語尾にアクセントが来るか来ないかの違いです)。 したがって実質的には以下のような表になります。
【形容詞変化】**男性名詞を修飾する形(=辞書形) …イ段** **中性名詞を修飾する形 …エ・オ段****女性名詞を修飾する形 …ア段**
硬変化**-ый / -о́й ****-ое** **-ая**
軟変化**-ий** **-ее** **-яя **
easyモードですね。硬母音ー軟母音の「ペア」になってるだけですから。 しかも、名詞の各性の語尾と、どこか同じ文字が使われていますね。
【名詞の性】 **ア段****イ段**ウ段 **エ・オ段**
**女性名詞 (ьも)****男性名詞 (ь, 子音 も)** (空きスロット) **中性名詞 (мяも)**
硬母音の字**а(ア)**ы(ウィ)**у(ウ)**э(エ)** о(オ)**
軟母音の字**я(ヤ)****и(イ)****ю(ユ)****е(イェ)** / ё’(ヨ)
「 но́ва**я** книг**а** 」などで分かる通り、**韻を踏むように変化する**と覚えておけば大丈夫でしょう。 ##### 追記:叙述用法について 形容詞には、述語の位置に置かれて主語とイコールになる(「The book is blue.」)使い方もあります(叙述用法)。 これもやっぱり同じで、イコールになる名詞の性に合わせます。「Книга синяя.」となるわけですね。 ### 3. 形容詞の形の変化(発展) 形容詞を変化させる際に、注意しなければならないのが「**正書法**」です。 たとえば、**хоро́ший**(good)という形容詞を考えます。これは軟変化の形容詞です。この形容詞を用いて**книга** (book)を修飾したい場合(「a good book」と言いたい場合)を考えます。 книгаは女性名詞なので、上の表に単純に従うと、形容詞の語尾をяяに変えて、「**хоро́шяя книга**」となります。 しかし、「шя」という並びは正書法的に許されていません(←カチュー**シャ**の後のы/я/юは禁止)。 したがってяをаに変えて、「**хоро́шая книга**」とならざるを得ません。 ※こんな風に、単語の途中であっても絶対に発動される最強の規則が正書法です。**カチューシャ様の前には逆らえないのですっ**。 \---- それがわかったところで一つ面倒な問題が生じます。 > Q.1 「русский」(Russian)は硬変化でしょうか?軟変化でしょうか? > > A.1 …イージーイージー、「-ий」で終わっているから軟変化に違いない、と思ってしまうのですが、じつは「硬変化+正書法」(つまり、もとは「русск**ый**」で、「кы」の並びが許されないからやむを得ず「русский」になってしまったやつ)です。 さらに… > Q.2 「горя́чая вода」(hot water)の「горя́чая」は硬変化でしょうか?軟変化でしょうか? > > A.2 さっきの表を見ると、「ая」は硬変化の女性形だから硬変化に違いない、と思ってしまうのですが、じつは「軟変化+正書法」(もとはгорячяяで、чяの並びが許されないからやむを得ずгорячаяになってしまったやつ)です。 …途端に、どいつが硬変化でどいつが軟変化なのかわけがわからなくなると思います。 しかし心配しなくても大丈夫です。**またカチューシャ様が助けてくれます。** 正書法発動条件の2グループ、カチューシャの「****」=「к, г, х」、カチューシャの「****ュー**シャ**」=「ч, ш, щ, ж」の場合分けがここで役に立ちます。

辞書形が「-**к**ий, -**г**ий, -**х**ий」で終わるものは**必ず硬変化**である。 辞書形が「-**ч**ий, -**ш**ий, -**щ**ий, -**ж**ий」で終わるものは**必ず軟変化**である。

これを参考にして、Q.1とQ.2を解いてみましょう。русскийはкийで終わっているので硬変化、горячаяはчийなので軟変化、とわかりますね。 ※硬変化(アクセント型)は必ず語尾にアクセントがあるので判別できます。逆に硬変化(非アクセント型)と軟変化には語尾にアクセントがありません。