n. 複数形・所有代名詞

複数形なんて最後にまとめてやればいいと思うんだけどなぁ。

なんで複数主格だけ最初にやるかなぁ。

Section1. 名詞の複数形の変化

語尾の文字によって、語尾が異なってきます。

1. 複数主格 (pl. nom.)

①規則的な変化

 

 

語末

男性

-子  ⇒  -子ы  
例:студент→студенты 

-й  ⇒  -и
例:музей→музеи
-ь  ⇒  -и
例:писатель→писатели
中性 -о  ⇒  -а
例:окно́→о́кна
-е  ⇒  -я
例:мо́ре→моря́
-мя  ⇒  -мена
例:и́мя→имена́
女性 -а  ⇒  -ы
例:комната→комнаты
-я  ⇒  -и
例:неделя→недели

-ь  ⇒  
例:тетрадь→тетради

複数主格が一番難しいってそれ一番言われてるから…。

・男性と女性→ イ段音をめざします。まだイの音が入ってないやつ(子, а)は「ы」に行き、すでにイの音が入ってるやつ(я, й, ь)は「イ」を強化して 「и」になります。
・中性→女性が幸いイ段音に行ってくれたので、空いたア段音をめざします。エ・オ段からア段に移ります。まだイの音が入ってない「о」は「а」に行き、既にイの音が入っている「е」は「я」に行きます。мяはご愛敬()

≪イメージ≫ ア段 イ段

ウ段

エ段 オ段
男性
…イ段音を強化。
 

(主格単数)
→【主格複数】




中性
…空いたア段音へ。
→【主格複数】

(主格単数)→

女性

…イ段音をめざす。

(主格単数)→ →【主格複数】


②不規則的な変化(魔境)

1) アクセント移動
2) 正書法による変化

これは別に「不規則」といえるものではありませんが…。まぁ簡単です。
例:「книга」は規則通りだと「книгы」ですが、гыの並びは許されないのでиに変えて「книги」となります。

3) -а́, -я́ となるもの(アクセントは語尾)

男性名詞にかぎって、こういう謎の変化が突然変異的に起きます。
たとえば、都市:го́род は「города́」となります。ほかにも、パスポート:па́спорт→паспорта́、先生:учи́тель→учителя́ などなど…

4) 出没母音

ピロシキ:пирожо́к→пирожки́ など、母音が勝手に消えることがあります。

5) -ьяとなるもの

兄弟:брат→бра́тья、息子:сын→сыновья́、友達:друг→друзья́など。
子音や母音が勝手についてきたり消えたりします。アクセントだって移ったり移らなかったりします。

6) -化け物ども

ということで複数形はたいへん厄介です。

 

 

EX. 基本的に複数形で使う名詞

形を見ればわかるんだけど、基本的に複数形で使う名詞もあります。

・часы́(時計):本来はчас(時間)の複数形ですね。
・деньги(金):響きが「ゼニ」みたい…。
・очки́(メガネ/サングラス):まぁ英語でもglassesっていいますし。


Section2. 複数形の形容詞の変化

硬変化 -ый / -ой
複数主格(pl. nom.)

-ые

複数生格(pl. gen.)

-ых

複数与格(pl. dat.) -ым
複数対格(pl. acc.) -ые(不活) / -ых(活)
複数造格(pl. inst.) -ыми
複数前置格(pl. prep.)

-ых

※硬変化(非アク)と硬変化(アク)は、語尾のアクセントの有無だけが違います。
※複数対格は、(もとが男性・女性問わず)不活動体ならые(nom.に一致)、活動体ならих(gen.に一致)となります。

覚え方:nom.くらいはがんばれ。gen. acc. prep.と1つ飛ばしに「х」が来る(所有代名詞等にも共通)。dat. と inst. は名詞と似てるからカンで行けるやろ。

軟変化 -ий 
複数主格(pl. nom.)

-ие

複数生格(pl. gen.)

-их

複数与格(pl. dat.) -им
複数対格(pl. acc.) -ие / -их
複数造格(pl. inst.) -ими
複数前置格(pl. prep.) -их

硬変化の「ы」を「и」に変えるだけの簡単なおしごと。

Section3. 所有代名詞

覚えられないことで有名な所有代名詞(英語のmy, your, our…)。形容詞と同じく、「自分の格」および「修飾している名詞の性」の2つの基準で変化する。

例:Это моё место. = This is my seat. …主格、かつ、中性名詞を修飾しているので、「моё」

とりあえず、мой(my)とтвой(お前の)とсвой(自分の)は一緒、наш(our)とваш(あなたの/あなたたちの/お前らの)は一緒、его(his)/её(her)/их(their) は無変化だから、実質的にмойとнашの活用さえ覚えればOK。あとчейもか。

1. мойの活用

※твойは下の表のмをтвに変えるだけ。свойはмをсвに変えるだけ。

【мой】

男性名詞を修飾

中性名詞を修飾 女性名詞を修飾 複数形を修飾
主格 nom. мой моё моя́ мои́

生格 gen.

моего́
мое́й мои́х
与格 dat.  моему́
мое́й мои́м
対格 acc. мой / моего  моё мою́ мои́ / мои́х
造格 inst.  мои́м
мое́й  мои́ми
前置格 prep. моём
мое́й мои́х

<覚え方>
・nom. :気合。例によって下の表を思い出してもらえばたぶん大丈夫。
・acc.:単数女性名詞は例によってア段→ウ段の法則。のこりはnom.かgen.に一致(活動体/不活動体)。
・それ以外:形容詞の軟変化とほぼ同じ(後ろのほうにアクセントが来るのだが、表記上は同じなのでごまかせる)。ただし、男性と中性の前置格のмоёмだけは注意(軟変化通りにするとмоемになっちゃう)。まぁ、別に「ёをеで書いた」と言えばいいんだけどさ。


【名詞の性】

ア段 イ段

ウ段

エ・オ段
女性名詞
(ьも)
男性名詞
(ь, 子音 も)
 (空きスロット)  中性名詞
(мяも)
硬母音の字 а(ア) ы(ウィ) у(ウ) э(エ) о(オ)
軟母音の字 я(ヤ) и(イ) ю(ユ) е(イェ) /  ё’(ヨ)

2. нашの活用

※вашは下の表のвをнに変えるだけ。

【наш】

男性名詞を修飾

中性名詞を修飾 女性名詞を修飾 複数形を修飾
主格 nom. наш на́ше на́ша на́ши

生格 gen.

на́шего
на́шей на́ших
与格 dat.  на́шему
на́шей на́шим
対格 acc. на́ш / на́шего  на́ше на́шу на́ш / на́ших
造格 inst.  на́шим
на́шей  на́шими
前置格 prep. на́шем
на́шей на́ших

<覚え方>
・nom.は気合。
・acc.:単数女性名詞は例によってア段→ウ段の法則。のこりはnom.かgen.に一致(活動体/不活動体)。
・あとは普通の軟変化形容詞だからいける。

3. чейの活用

【чей】

男性名詞を修飾

中性名詞を修飾 女性名詞を修飾 複数形を修飾
主格 nom. чей чьё чья́ чьи́

生格 gen.

чьего́
чье́й чьи́х
与格 dat.  чьему́
чье́й чьи́м
対格 acc. чей / чьего́  чьё чью́ чьи́ / чьи́х
造格 inst.  чьи́м
чье́й  чьи́ми
前置格 prep. чьём
чье́й чьи́х

<覚え方>
мойの活用の「мо」を「чь」に置き換えればOK。ただし、男性名詞主格(+不活動体対格)については、мой→чьйとすると、一つも母音が出てこない気持ち悪い単語になってしまうので、仕方なくьをеに変えて「чей」としている。

※「чей」は英語の「whose」と似ている。ただ、語順的には「Чей это ~」というのが自然なようである。

例:Чья это книга? (この本誰の?)ー Она моя.(それわたしの。)
※1:位置的には離れているが、книгаの性に合わせてчейを変化させるのを忘れない。(英語はWhose book is this?のようにwhoseとbookをくっつけてthisを語末に置くが、ロシア語は語末に重きを置くため、大して意味もない「это」が語末に来るのを嫌う。まぁЧья кинга это?でも間違いではないが)
※2:英語はmyとmine, yourとyoursのように「~の」と「~のもの」が区別されるが、ロシア語は所有代名詞だけで「~の」も「~のもの」も表せる。そういう意味では日本語と同じ。