Section3 名詞の性
1. 名詞の性の暗記(基本)
ロシア語には男性・中性・女性の3つの性があります。
しかしそんなに絶望するほどではありません。単語の語末を見れば、どの性の名詞なのかがだいたいわかります。
「名詞の性は、語末の文字を基準にした分類に過ぎない」と認識することが大事です。
性 |
語末 |
||
男性 | -子音 | -й | -ь |
中性 | -о | -е | -мя |
女性 | -а | -я | -ь |
上の表をまずは頭に入れましょう。
- 男性名詞は、語尾が「-子音」か「-й」か「-ь」で終わっています。だいたい「イ段」と覚えましょう。
例:стол(机), геро́й(英雄), учи́тель(先生) - 中性名詞は、語尾が「-о」か「-е」か「-мя」で終わっています。だいたい「エ・オ段」です。
例:окно́(窓), мо́ре(海)、и́мя(名前) - 女性名詞は、語尾が「-а」か「-я」か「-ь」で終わっています。だいたい「ア段」と覚えましょう。
例:странá(国)、семья́(家族)、ночь(夜)
先ほどの硬母音/軟母音の表に立ち返ると、おおむね以下の通りです。中性名詞は「-о, -е」と一見関係ない組み合わせですが、ちゃんとこの表のペアになってるわけですね。
【名詞の性】 |
ア段 | イ段 |
ウ段 |
エ・オ段 |
女性名詞 (ьも) |
男性名詞 (ь, 子音 も) |
(空きスロット) | 中性名詞 (мяも) |
|
硬母音の字 | а(ア) | ы(ウィ) | у(ウ) | э(エ) о(オ) |
軟母音の字 | я(ヤ) | и(イ) | ю(ユ) | е(イェ) / ё’(ヨ) |
※空いているウ段(у, ю)は、格変化システムで上手に使用されます。
2. 名詞の性の暗記(発展)
① мяで終わる中性名詞
・мяで終わるものは、яで終わる点でつい女性名詞と勘違いしやすいので気を付けましょう。
・ただ、мяで終わる名詞は(全部でも)10個しかありません。しかもそのうちよく使うのは и́мя(名前), вре́мя(時間)の2つです。だからмяで終わる中性名詞の存在は最初は無視して大丈夫です。
※軍歌を歌いたい人はその2つに加えて、знамя(旗)も頭に入れておきましょう。頻繁に出てきます。ソ連国歌(1977)でも「И Красному знамени славной Отчизны / Мы будем всегда беззаветно верны !」(そして、輝かしい祖国の赤旗に、 我々は今後も変わらず、献身的に忠誠を尽くすのだ!)とありますね。
※ロシア詩を読みたい人は、бремя(重荷)も覚えておくといいかもしれません。времяと韻を踏めるので、たまに見かけます。
② 現実的に性別がある名詞
「名詞の性は語尾による分類に過ぎない」と先ほど申し上げましたが、「父папа」や「おじдядя」など、明らかに現実世界で性別があるものは、現実世界の性別に合わせて運用されます。папаは女性名詞の語尾ですが、男性名詞扱いになるということですね。
例:「молодой папа」(若い父ちゃん)など、修飾する形容詞などに影響を与えます。
※格変化については「а」で終わる女性名詞と同じように変化しますので、基本的にあまり気にしなくても。
③ ьで終わる名詞
表を見ればわかる通り、「ь」で終わるものは男性と女性の両方の可能性があります。これは原則として、どちらの性なのか一つ一つ覚えなければいけません。しかしそもそも「ь」で終わる単語が少ない上に、半分くらいは見分ける法則があります。
規則1. 「~する人」(~er, ~ist)を表す「-тель」は男性名詞
例:писа́тель = писа́ть(=to write)+тель(=er) = writer は男性名詞
規則2. 名詞を作る「-ость」「-есть」は女性名詞
例:гла́сность = гла́сный(声に出す) + ость(こと) = グラスノスチ, 情報公開 は女性名詞
※「гость(客; 男性名詞)」(←гости́ницаホテル)など、そもそもостьが名詞語尾でないものは除きます。тельとかも同じね。
規則3. 「-чь」, 「-шь」, 「-щь」 ,「-жь」 は女性名詞
例:ночь(夜)、ложь(嘘)など。 この4組が覚えづらいなと思ったら、前ページの正書法の覚え方「カチューシャ」(к/г/х ; ч/ш/щ/ж)を思い出しましょう。
…そうですね。カチューシャの「チューシャ」の部分(ч/ш/щ/ж)が、ちょうどぴったり当てはまります。
規則4. 実際の性別があるものはそれに従う
例:мать(母)など。
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以上でだいたい半分くらいは導けます。あとはフレーズを繰り返して覚えましょう。
例:Добрый день(こんにちは)って言うからдень(day)は男性だな…
「赤の広場」はКрасная прощадьだから広場は女性名詞だな…(発音注意:アクセントのない「ща」は「シ」くらいに発音される。「クラスナヤ・プローシチ」щが常に軟子音なので実質「щя」であり、アクセントのないяは「イ」だから。これは「ча」も一緒)
(追記)複数形になると…
複数形になると、名詞の性が消失します。つまり、複数形になると名詞の性別を気にする必要がなくなるということです。
それが何か?と思うかもしれませんが、とりあえず頭の隅っこに入れておくといいかもしれません。
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